太陽の光は、さまざまな色の光の混合であることは、よく知られています。
これらの光は,ひとつひとつ波長が異なり、波長の短いもののほうが長いものよりよく曲がる性質を持っています。
このように屈折率が異なるために、プリズムを通すと美しいスペクトルに分かれるのです。
このように光がプリズムによって分かれることを『分散』もしくは『分光』といいます。
そして、この光の分散という性質は、眼鏡レンズに『色収差』という現象を引き起こすのです。
眼鏡レンズは、基本的に光の屈折を目的とし、プリズムの集合体とも言うべきものなので、設計によって『色収差』をまったく無くすことは不可能です。

つまり、色収差の少ない素材を選ぶより仕方がありません。
そこで、レンズ素材の色収差の度合を示す数値として『アッベ数』が用いられています。
アッベ数とは逆分散率のことで、求める式は下図のとおりです。まず基準にする光を決め、その光の屈折率によって分散率を公式で求めます。
さらに、その分散率を逆数にしたものがアッベ数です。
つまり、分散率の大きいもののアッベ数は小さく、反対に色収差の少ない素材ほどアッベ数は大きな数値となります。


色収差が特に出やすいのは、光を収束させるプラスレンズです。
強度になると、周辺部のプリズム作用がより大きくなるためにその傾向が強まります。
したがって、プラス強度のレンズの選択には特にアッベ数を留意する必要があると言えるでしょう。
また、光を拡散させるマイナスレンズの場合は、周辺部のプリズム作用の大きなところを通った光が目に入ることがあまりないため、影響度は少なくてすみます。

 


プラスレンズもマイナスレンズもレンズカーブを浅くすることは、薄く軽くするばかりではなく、スリムでバランスのよい眼鏡に仕上がります。
しかし、現在の眼鏡レンズのカーブは意味もなく深いわけではありません。
非点収差、コマ収差などの眼鏡レンズとしての収差を軽減させるためのカーブ設計なのです。
したがって単にレンズカーブを浅くしただけでは、光学的によいレンズとはいえません。
そこで、レンズを通して物を見る時、たとえばレンズ周辺部で見る時は、視線とレンズ面が斜交しているのが普通です。

すると、従来の球面設計では、視線の角度やレンズ面の肉厚によって収差が生じて
しまい、それが像のゆがみとなって感じます。
しかし、レンズカーブを非球面化することによって、光学的に優れ、かつ、薄く軽くすることが可能となりました。